気持ちいいときの「じわじわ」は、目に見えないけど迫ってくるものがある。
さっそく、色を描き始めた。
実はこの絵の前に、
スケッチブックに水彩絵の具で描いてみたんだけど
どうもしっくりこない。
筆が画用紙に引っかかって
思うように伸びなかった。
調べると、「水彩紙」というものがあるらしい。
必要以上に絵の具がにじむことなく
滑らかに描けるそうだ。
なのでさっそく、ポストカード大のを買ってきて
試しに毎日描いてみることにした。
絵とは言っても、私が描くのは
好きな面積の分だけ色をただ載せていく、というもの。
絵ともデザインともつかないが、ひとつ基準があるとしたら、
描いているプロセス、終わった後眺めていて「気持ちいい」かどうか。
そして「気持ちいい」の結果できたものが完成品となる。
「こういう絵を描こう」とある程度プランニングして
作品を創るものとはだいぶ異なるが、
これは「誰でも絵って描けるんだ!」という発見をうながすには
とてもいいプロセスだと思っている。
―――
「気持ちいい」についてさらに話してみる。
先日、とある公園で散歩したときのこと。
こういう背の高い木が
わっさーーーっと生えている場所で、
ひとりのおじさんがラジコンカーで遊んでいた。
木の下だから、適度に落ち葉も散らばっていて
木の幹という障害物もそこそこあって。
それをうまいことよけながら、ラジコンカーは同じ場所を
グルグルと∞の字のように走り回っていた。
コーナーを曲がるときに、「ザザザザッ」という音とともに
砂煙が巻き起こり、木の葉が散らばる。
おじさんは、それを何度も繰り返していた。
∞の字よりは多少複雑なコースとはいえ、
同じことの繰り返し。
で、私はそれを近くのベンチから眺めていて
おじさんから、じわじわと高揚感が込み上げてくるのを感じた。
私もじわじわと楽しくなって
じっと飽きずにそのグルグルを見ていた。
おじさんはやわらかく微笑んでいた。
ずっとずっと同じコースで「ザザザザッ」「ザザザザッ」
を繰り返していて、それはそれは楽しそうだった。
ラジコンの世界はまったく知らないが
帰りにラジコンでも買って帰ろうかと思ったほどだ。
「気持ちいい」の効果は、これだと思う。
地味にだまって楽しんでいるだけなのに
なぜかそそられる人が現れるのだ。
ラジコンカーがすごいから、じゃない。(性能は私には分からない)
操縦テクニックがすぐれているから、じゃない。
(このおじさん以外のテクニックを最近見ていない)
おじさんのじわじわきている感じが
見ていて楽しかっただけなのだ。
ちなみに、この「じわじわ」というのは
ちまたでいう「ワクワク」に近いんだろうなと後で思ったけど
私的には「じわじわ」の方がしっくりくるな、とおもった。
ラジコンの「ザザザザッ」の高揚感と
絵の具のついた筆が紙の上を「ざざざざざ…」とにじんでいく高揚感は
似ているな、とおもった。
見た目は静かだけど、そこに目に見えないドラマが、ある。